ファクタリングは違法なのか否かを税理士が徹底解説!

ファクタリング基礎知識

ファクタリングは企業の資金調達手段の一つであり、違法な取引ではありません。近年、一部のファクタリング事業者が、違法な手段を用いて金銭を騙し取った等のニュースが増えたことで、ファクタリング自体が違法行為だと勘違いしている方も多いのではないでしょうか。そこで本記事ではファクタリングの法的解釈を中心に解説し、違法なファクタリング会社の見分け方も具体的に解説していきます。

プロフィール
【執筆・監修】
リトラス税理法人 京都事務所:税理士 佐藤憲亮

税理士業界歴15年超。 「お客との対話を大事に」をモットーに、何でも相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。また、税務記事や税務論文の執筆も行っており、スキマ時間を使ってブログ運営もしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所の職員として12年の実務経験を積む。税理士資格取得後は、税理士法人で社員税理士として登録し、現在は京都で税理士事務所を運営している。

1.ファクタリングの基礎知識

(1)ファクタリングは違法ではないのか?

ファクタリング取引には、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあり、それぞれに法的根拠もあるため、違法性はありません。 

2社間ファクタリングとは、自社と債権を買取るファクタリング会社との間で行う債権譲渡のことを言います。つまり2社間取引は、一定の手数料を負担することで、債権を早期回収することと同じ結果になります。 

3社間ファクタリングとは、自社(債権者)、債権を買取るファクタリング会社と得意先(債務者)の3社間で行う取引のことを言います。自社は得意先に了承を得た上で、債権をファクタリング会社に譲渡するため、ファクタリング会社は得意先から直接債権回収を図ることが可能となります。そのため、3社間取引ではファクタリング会社のリスクは下がり、手数料は2社間取引に比べると低額です。しかし、自社と取引先との関係性が悪化することもあるので、利用する際は注意が必要でしょう。 

なお、2社間取引では、得意先に債権譲渡の事実を伝える必要がありません。また、債権の回収は自社で行い、回収した資金をファクタリン会社に引き渡すことになるため、ファクタリング会社が資金回収できないリスクは高くなり、その分手数料も高くなります。これに対し、3社間取引は得意先の了承を得る必要があるなど、契約手続きが煩雑となり、結果、入金されるまでに時間を要します。ファクタリングを希望する会社は、債権の早期現金化を目的としていることが多いため、手数料が高くなったとしても、現金回収のスピードが早い2社間取引を利用する会社が多数です。    

(2)ファクタリングの法的根拠

2社間ファクタリングは債権の売買であり、民法466条(債権の譲渡性)と民法555条(売買)に準拠して行われる取引となり、ファクタリング会社との契約書を確認すれば、売買契約である旨が記載されているので違法性がないことはわかります。なお、債権譲渡は自由に行なえますが、第三者対抗要件がないため、相手の同意がない場合はファクタリング会社が債務者から資金回収を行うことはできません。

3社間ファクタリングも債権の売買となりますが、法的根拠は民法466条(債権の譲渡性)、民法467条(指名債権の譲渡の対抗要件)と民法555条(売買)になります。こちらは債務者に一定の方法で承諾を得た上で債権譲渡を行うため、第三者対抗要件を満たすこととなり、ファクタリング会社は債務者から直接資金回収を行うことができます。

 ファクタリングは債権の売買であるため、民法587条(消費貸借)に準拠した金銭消費貸借契約(金銭の貸付に関する契約)を結ぶことはありません。そのため、契約書に消費貸借等の文言が入っていれば、本来のファクタリングとは違った取引である可能性が高いため、契約を締結する前に内容をしっかりと確認しておくことが重要です。

2.違法で悪質なファクタリング会社の特徴とその見分け方

(1)契約書の内容を確認する

ファクタリング会社の中には、ファクタリングを装い金銭を貸付け高額な利息を支払わせる業者もいるため、契約内容が売買契約ではなく、消費貸借契約となっていないかの確認は必要です。そもそも貸金業登録を受けていない事業者は金銭の貸付を行うことはできません。また、ファクタリングでは金銭の貸付は生じないため、多くのファクタリング会社は貸金業登録をしていません。契約内容に消費貸借の文言が入っている場合は、ファクタリングを謳った金銭の貸付の可能性があるため注意しましょう。

(2)取引の経済的実態を確認する

契約がファクタリングに関する売買契約であったとしても、実質的に金銭の貸付と同様の取引となっていないか検討が必要です。例えば、2社間ファクタリングの場合、譲渡した債権の回収については、ファクタリング会社から自社に委託されることとなりますが、その債権回収ができなかったときは債権を自社が買い戻すこととなっている、又は自社の資金によりファクタリング会社に債権額を支払うこととなっているときは、金銭の貸付取引と同様の経済的実態と言えます。そのため、2社間取引において、ファクタリング会社が債権回収のリスクを負っていない場合は、ファクタリングを謳った金銭の貸付の可能性があります。

3.ファクタリングの会計処理と税務処理(売買と貸付の違い)

 ファクタリングは債権の売買取引であり、違法なファクタリングは金銭の貸付取引であるため、会計処理や税法上の取り扱いは異なります。ここでは、具体的な会計処理と税務処理について解説していきます。

(1)会計処理と法人税法上の取扱い

①売買取引であった場合の処理

売上発生時】
売掛金100/売上高100

【ファクタリング実行時】
現預金95、売上債権売却損5/売掛金100

売上債権売却損は債権譲渡時に一度のみ発生する手数料のことで、当該手数料は会計上・法人税法上で費用・損金となるため、特別な処理は必要ありません。

②金銭の貸付であった場合の処理

売上発生時】
売掛金100/売上高100

【ファクタリング実行時】
現預金95、 支払利息5/借入金100

金銭の貸付取引は自社からみれば借入金となります。借入金は今後返済していく必要がある負債として認識する必要があり、借入金が存在する限り利息の支払いが発生します。支払利息は会計上・法人税法上も費用・損金となるため、特別な処理は必要ありません。 

(2)消費税法上の取扱い

①売買取引であった場合の処理

ファクタリング取引から発生する金銭債権の譲渡は、消費税法上、非課税売上となります。また、金銭債権の譲渡にかかる手数料は非課税仕入となるため、どちらの取引も消費税を考慮する必要はありません。ただ、金銭債権を譲渡した場合は「金銭債権の額×5%」の金額を消費税の計算上使用する「課税売上割合」に関係させる必要があります。

「課税売上割合」 = 課税売上高総売上高(課税売上高、非課税売上高)

消費税の計算は「売上等に係る消費税(受け取った消費税)- 仕入等に係る消費税(支払った消費税)= 納税額又は還付額」で行います。この際、仕入等に係る消費税は一定の場合において全額控除することができず、売上全体に対する課税売上の割合に応じて控除することが可能となっています。そのため、売上の種類ごとに消費税法上の取扱いを判断し、集計していく必要があります。集計は会計ソフト等を利用していれば自動集計できるので、日々の取引の入力を行う上で取引判断を行いましょう。

金銭債権の譲渡は消費税法上の非課税売上となるため、金銭債権の譲渡を行うことで課税売上割合は小さくなります。課税売上割合が小さくなることにより、消費税計算上で控除することが出来る消費税が減少しますので、結果として消費税等の納税額が増加することとなります。ただ、関係させる金額は「債権譲渡額×5%」の金額のみであるため、影響額は非常に小さいと言えるでしょう。

②金銭の貸付であった場合の処理 

金銭の貸付は、そもそも将来返済されることが約束された取引であるため、財やサービスを消費した際にかかる消費税法上の課税取引には該当しません。また、利息は金銭貸付サービスの対価としての支払いであるため、消費税法の非課税仕入に該当し、利息金額の中に消費税は含まれません。

4.ファクタリングを利用するときの注意点

(1)違法な業者に注意する

ファクタリング事業者を装い、金銭の貸付を行う違法な事業者は存在しますが、その見分け方を知っていれば安心してファクタリング取引を行えます。しかし、手数料が高額な事業者であったり、貸金業登録を受けている事業者と取引を行う際は、その契約内容に注意する必要があります。 

ファクタリング手数料は、事業者や取引内容によって異なります。法的な上限規制はありませんが、2社間ファクタリングの一般的な手数料は、おおよそ10%~20%となっています。ファクタリング取引は金銭債権の売買取引であるため、両者の合意があれば金額設定は自由であり、その手数料金額は、ファクタリング会社が得られる利益、ファクタリング会社が負うリスクの高さで決まってきます。違法な事業者はリスクは低いにもかかわらず、手数料を高く設定することが多いため、不審を感じたら取引をストップすることが大事です。 

(2)ファクタリング会社の選び方

事業を継続していくためにキャッシュは何よりも重要です。事業にとってのキャッシュは人間にとっての血液のようなものであり、キャッシュが不足すると目の前の資金繰りを何とかすることに奔走し、将来に向けた投資を行うこともできなくなっていきます。資金調達の手段は多種多様ですが、ファクタリングもひとつの資金調達の手段であり、使い方を間違えなければ、資金繰りを改善するための非常に有効な手段です。そのため、悪質なファクタリング会社に騙されないよう、正しい知識をしっかりと持っておくことが重要となります。

悪質なファクタリング会社と取引をしないようにするためには、1社のみに査定を依頼して利用を検討するのではなく、複数の事業者から情報を集めて比較検討することが重要です。こちらの「ファクタリングベスト一括査定サイト」は優良なファクタリング会社の取扱いが多いため、安心して利用できるのでオススメです。

ファクタリングベストの一括査定サイト(https://factoringbest.com/

まずは一括査定サイトを利用して情報収集を行い、市場全体の平均を知ることが重要です。比較検討することで、自社が求める条件に合致するファクタリング会社も見つかるでしょう。

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